◯あるアーティストの活動日誌
*年度
1日 初日。2回公演。体力的にも辛いが、一回目と二回目の間が一時間もないところも過酷だ。
「商業では皆やっているんだ」と、自分を励ます。
二時間半、トイレに行く時間もなく、舞台と客席を走り回り、歌い踊る。やっぱりしんどかった。
2日 一回の公演がこんなに嬉しいなんて!
「一回でいいなら思いっきりやっちゃおうっと」とご機嫌な私。
とにかく昨日の二回公演が辛かったのだと実感した。
3日 また二回公演。今度は一回目と二回目の間に集中して10分くらい仮眠できた。
4日 やっと休演日!朝から鍼に行ったきり、疲れて動けなくて何もできなかった。
5日 午前中に膝と腰に注射を打ちに行き、その後楽屋入り。一回公演。
7日 朝、稽古を抜けて、別の注射を打ちに病院へ。
9日 休む暇なく、次のショーの稽古をして、夜はまたそのショーの仕込み。
仕込みが大変で、舞台アタリができたのは夜中の12時以降。
今日は全員近くのホテルに宿泊。一日の単位がなくなってきている。
10日 朝8時半から10時まで通し稽古。開演は13時半。
疲れで目の前に霞がかっている。声は出るはずもなく、とにかく眠りたい。
会場の都合で10時から開演直前までは何もできないから、近くのカフェで居眠り。なんだかわからんまま一回目のステージ終了。拍手してくれているお客さんに申し訳なかった。
12日 朝8時半集合。稽古・位置アタリ。開店前にしかアタれないので、朝早くなってしまうのだ。
夕方のステージに友人が二人来てくれたので、夜は屋上のビアガーデンに行ってみた。
料理も美味しくて、とても楽しかった!疲れている時こそ、笑うことが必要。
13日 2ステ。こんなに疲れていいかげんにやってるのに、演出家に呼び出され、気持ち悪いくらいほめられた。
なんか機嫌とられたって感じで、素直に喜べなかった。
17日 やっとの連休夏休み!朝から、富士山の方面に一人遠足した。
夕方には東京に帰り、友人が誘ってくれたコンボイショウのコンサートに行った。
コンボイの人達の体力に感心した。
18日 招待券をもらった芝居を同業者の友人と見に行く。
有名女優が出ている年配の方向けの芝居だったが、面白かったし、勉強になった。
いつも疲労がたまっているので、どんな物を見ても、睡魔はやってくるのだが大丈夫だった。
19日 稽古。なんかだるいと思ったら、38度の熱。
20日 稽古後、移動。しかし、熱も下がらず、本番が不安だったので、病院で注射をしてから、単独で入る。
21日 公演。この日中に帰京。23時頃に到着。
22日 公演。9時入り、仕込み開始。16時半開き。
23日 13時から稽古。去年やった作品をまた秋にやるので、その振りおこし。
24日 10時から稽古。その作品に新しく参加するメンバーに振り写し。
26日 オフ。病院とヴォイストレーニング。
27日 公演。10時入り。二幕終盤で、相手役が腹痛を訴えてきた。しかし立て続けに出番があり、裏方の伝える間もなく、やり続けるしかなく、とうとうフィナーレ前にフラフラになっていた。
近くにいた先輩が袖にハカし、私も袖にハケテ、舞台監督に「救急車!」と言って、また舞台に戻り、最後まで続けた。結局大きな病気ではなくてよかった。
29日 公演。9時入り、16時半開演、終演後帰京。
30日 13時から、本公演とは別のコントの稽古。
31日 飛行機で移動。
1日~4日 ひたすら朝から夜まで稽古。午前中は歌・踊り、午後は芝居、夜はそのどちらか。
ずっと地下稽古場にいるので、天気もよくわからない。
5日 本当は一昨日までは陸路移動の予定だったが、あまりの過労ため、何人かだけが飛行機になった。そしたら、とある客演から不公平だと文句が出て、議論の末、なんと全員飛行機になったのだ!ケガの功名?
広島空港まで飛行機、岩国まではバス・電車。陸路よりずっと速いし、結果的によかった。夕方には着いたので、何人かのグループでビール飲みながら、(なんだかいつも飲んでるような気がして、ちょっぴりヤバイかもと、今反省した。)
「錦帯橋」を見に行く。想像していたのよりずっと大きくて、立派で、木の香りがして感動した。
明日からやる作品は水をテーマとした作品だ。
6日 オフ。四季の「ひばり」と宝塚雪組「スサノオ」と2本観劇。友人がすみっこに出てる。
四季のストレートプレイの楽しみ方・見方がやっと少しわかってきたような気がするが。
7日 10時出発、16時半頃東京着。トラック一台分程の物を稽古場に荷降ろしして、解散。
夜は一人で、ご年配の有名評論家や新劇系演出家の集まる気軽な飲み会に行く。毎月開催されているラフな会で、ひょんな縁で半年ほど前に誘われたのだが、何かと東京にいない私はまだ二回しか参加できていない。
私には未知の話題が多く、物珍しくて勉強になる。この日は「シェイクスピアとヨーロッパの王朝系図について」の話が熱く語られてた。しかし寝不足の私は眠いとにかく眠くて、ぼーっっとしていた。1時就寝。
8日 10時集合で作業日。最近はあまりに作業日が多いからか、誰かの意見で、「役者は外にレッスン等、勉強しに行くのも大切」ということになり、レッスンのある人は優先していい、という珍しいことになった。今まで、こっそりレッスンに行っていた私には好都合!でもなんでそんな話になったのか不思議だ。
朝は歯医者さんに。
一旦稽古場に戻り、衣装の洗濯、仕分け、後片付け作業を一人黙々とやって、夕方16時からはヴォイストレーニング、18時からはバレエへ。
本当はなんだか精神的にぐったり疲れが出てきてて、こんな日まで無理してバレエに行くことはないかも、と思ったが、こういう時こそ、自分の関節や筋肉と暗く向き合おう、とスパルタ気分で行った。結果的に行って良かった。しかし声の調子はかなり良くない。朝、歯医者さんと会話してびっくりし、ヴォイストレーニングもさっぱりだった。
10日 オフ。朝は声のためにもゆっくり眠り、16時からのバレエに。明日は稽古と思うと消えたい気分。よく一緒に怒鳴られる先輩からも、後ろ向きなメールが。明日の稽古に演出家が来ると聞いてから、とても怖い夢を見た、とのこと。私も頭が割れるように痛くなり、吐き気もしてきたが、バレエに行くと少し治った。バレエの後、鍼に行き、気分が前向きになるようなツボに鍼して欲しいとお願いしてしまった。帰宅後、寝るまでは衣装を着て、役の扮装で過ごした。
13日 新宿厚生年金にてゲネ。毎年のことながら、初めてセットを飾るのに、転換稽古する間もなく、ゲネをする。臨機応変が全て。私はしたっぱ時代にしごかれているので、なんてことはないが、今年入ったばかりの新人の女の子は目が回っていた。生き生きしている団員、ぐったりと笑顔を絶やさない心優しき劇団員。11時過ぎに帰宅。
14日 ワークショップ卒業公演本番。二回公演。私は上手転換要員なのだが、一人、こまったちゃんのおばさんがいて、大変だった!クイックチェンジ=早変わりがどうしても間に合わないのだ。他の同じグループのおばさん達とは違い、その人だけは直前のナンバーでも歌い踊ってて、「次の曲の前奏だけで袖にハケテ来て→歌い出しから出る」、という、どう考えても難易度高い超クイックなのだ。
昨日のゲネでは、私ともう一人で介錯に付いたが、やはり間に合わなくて、私は優しく「今晩家で、速く着替える練習してくださいネ」と言ったが、「センセ、あのネ、私ネどうしても、その前の場面に出たい、って言ったの。だから他の人は出てないけど私だけ出してもらったんですぅ」と言われ、グッタリ。
しかし、とにかくやるしかない。私は意地でも間に合わせてやろう、と裏方根性を出した。
二回目公演では、一袖後ろ、しかも客に見切れる最もギリギリの所で待ち構え、有無を言わさずそのおばちゃんの腕をひっつかみ、衣装を剥ぎ取り、無理やり頭から次の衣装をかぶせ、舞台のつきとばすように出した!あまりの速さに周りの裏方も拍手していた!バラシ後、私は打ち上げには出ないで、トラック助手ですぐ帰ったのだが、その人から涙ながらの感謝の言葉があったとのことだった。感謝されても、という感じだが、ま、いいとしよう。怒涛の公演は終わった。
20日 本番。大詰めのシーンで、小道具をうっかり忘れて来るというハプニングあり。二人で栗拾いに行く所、栗拾い籠を忘れたのだ。私の「行くぞ!」という台詞に、彼はかわいい笑顔で「ちょっと待ってて」と言い捨て、テクテクとハケて小道具置き場に籠を取りに行ってしまったのだ。一人舞台に取り残された私は、やっと籠がないことに気づき、じっと待ってるのも変だから、てきとーに「栗拾いに行くのに籠忘れてどーすんだよー。」とかなんとか言って、ヤツが満面の笑顔で出てくるのを待っていた。子供相手の芝居って楽しい。
29日 ここは河童の伝説の多い町で、新しく家を立てる人には河童の置き物を設置するお金が町から出るとか。町の至る所にお地蔵さんのように河童の置き物が!
30日 昭和の町並みが最近観光で注目されているということだが、一日中劇場(公民館)にいる我々には悲しいかな、郵便局にすらいけない。でも地元の実行委員の手作り昼ごはんがものすごく美味しくて、劇団員大喜び!客席最前列に木の長いすが設置され、地元の小学生がひしめきあって座っていた。
国東半島の子供達は解放的で、いちいち舞台に話しかけたり、芝居中でも質問してきたり、まさに客席参加型(?!)のはじけた劇場ができた!
1日 演出家の稽古。「お勉強」と称して、先輩が長時間絞られていた。見ているだけで、ぐったり疲れてしまい、夜はバレエに行くつもりだったが、やめた。
3日 姫路市公演。ひさしぶりの本公演だったので、相手役が午後から体調が悪いと言い出し、開演2時間前に39度の熱を出し、救急車で病院に行ってしまった!あわや公演中止か、代役か、と大騒ぎになったが、点滴を終えて病院から帰って来た彼は根性でやり通した。
9日 串間市に移動。高速を降り、日南海岸沿いにくねくねと走っていった。鬼の洗濯板を見て歓声をあげ、ブーゲンビリアの花に南国感を感じながら、最南端串間へ。道端に蟹がたくさんいたり、アマガエルが何匹もいて、みんな大喜び。
10日 参加型リハーサル。さすが日照時間の長い南国・串間の子供はのんびりしてて、ホンワカしてる。
11日 参加型本番。数日前の雷のせいで会館のエアコンが故障してしまい、熱い熱い本番!体育館公演並だった。そして、終演後に野生馬のいる都井岬のホテルに移動。ホテルに着いてから、希望者でこの時期しかできないという、トビウオ漁体験に!沖に出て、灯りを沈めると集まってくるトビウオを、大きな網で、金魚すくいの要領で捕まえるのだ。しかし時間も遅くてトビウオは寝てしまったみたいで、なかなか寄って来ない。漁船は揺れるし?まる所はないし、網は大きいしで、仁王立ち、いや2番ポジションプリエで、じっと海面をにらんで、トビウオを待つ。結局私は1匹だけすくい、全員で8匹くらい。港に帰り、漁師さんがさばいてくれて、お刺身で食べた。美味しかった!
12日 飛行機帰京。朝は野生馬をたくさん見て、移動のバスからは猿が見え、ウリンボウも逃げ惑い、まるでサファリパークのようだった。空港には11時半に到着したが、飛行機は15時。空港のベンチでぐうぐう眠り込んでしまった。
13日 オフ。歯医者さんに行き、ヴォイストレーニング、バレエに行って一日が終わった。
14日 夏休みイベントの稽古。ただのショーだが、台本もちゃんとあり、台詞も結構あって大変。午後になって作曲家が新しいナンバーを作ったので、歌入れした。
16日 同じくイベント稽古。 アフリカやハイチの民族衣装を着るシーンがあり、資料集めに時間がかかる。
ハイチの総領事館に電話したり、ネットで写真を探したり。作るのも自分達なので、早くも憂鬱。
明日は本公演なので、積み込みもやり、この日は早目に18時前には終わり。
17日 東久留米公演。今日は16時半開き。友人が見に来てくれた。初めて見に来たので、相手役が本当の10歳だと知ってびっくりしていた。「相手役が10歳」と言ってあったのに、設定が10歳でオトナがやってるのだと思っていたらしい。
18日 オフ。友人の出ている舞台を観劇後、バレエへ。
19日 福岡に飛行機移動。ホテルは繁華街から遠かったのだが、路線バスに乗り、天神まで出て、博多らーめんを食べた。
20日 福岡市公演。会場の搬入口にセットがたくさんあって、荷下ろしが大変だった。
古い会場で、パイプ椅子一つ、長机一つずつ使った数に、使用料金がかかったらしい。
21日 広島に移動。お好み焼きを食べに行った。
24日 朝、飛行機で帰京し、宝塚宙組の「ファントム」を見に行った。
夜は誘われてた飲み会があったが、疲れてしまったので、ごめんなさいして、家でゆっくりした。
26日 稽古。やっと新しい曲もできたが、今度は覚えるのが大変。踊りながら歌ったりしたら、もう歌詞は「うにゃにゃ~???」、出てこない。
27日 稽古。午前中は本公演の稽古。午後はパフォーマンスショーの演出家稽古。
30日 午前中は仕込み続行、踊りの位置アタリをして、午後からは演出家の稽古。
まずは新しいセットに足しての新しい動きの段取り付け。
一度アタマから通しながら動きを付けただけで、一日が終わってしまった。
31日 午前中は歌の稽古。午後からはまた演出家の稽古だが、昨日付けた動きを夕べ一晩寝かせしまい、放っておいてしまったので、相手役と昼食の時間をさいて思い出し練習。かなり複雑な動きで二人で頑張って思い出したが、演出家の稽古で一箇所間違ってしまった。10歳彼は「やっちゃったね。」と私に微笑かけ、私を励ましてくれた。今日も早目に19時に終わった。